追悼、大杉漣さん。
名バイプレイヤーにして、「シン・ゴジラ」では未曾有の事態に困惑する総理大臣を演じました。
今日の夢中図書館は、「シン・ゴジラ爆地巡礼」特別編、大杉漣さんを追悼するとともに、彼が劇中で演じた大河内総理を追悼します。
考えろ、考えろ!
ゴジラの東京侵攻を阻止すべく多摩川沿線で展開されたタバ作戦。
自衛隊の総力を挙げた迎撃も、ゴジラの歩みを止めることができませんでした。
花森防衛大臣「総理、残念ですが、ここまでです」
大河内総理「わかった。作戦を終了する」
絶望とともに静まり返る官邸のなか、ついに大河内総理の感情が爆発します。
「この国はどうなるんだ。考えろ、考えろ!」「下向くな、下向くなよ!」
日本国総理の壮絶なまでの叫びが官邸にこだましました…。
未使用テイク
この白熱のシーン。実は本編で使用されていない、未使用テイクの一場面です。
映画「シン・ゴジラ」には、膨大な未使用テイクがあります。
この未使用テイクの一部は、「シン・ゴジラ」Blu-ray/DVD特別版で見ることができます。
プロモーション映像やメイキング映像と合わせて、ディスク2枚分。ここに、時間にして332分もの特典映像が詰め込まれています。
なかでも、圧倒的な存在感を見せている未使用テイクが、冒頭の、大杉漣さんが演じる大河内総理の激情シーン。
思えば、大河内総理は、初登場の場面から頼りないリーダーでした。
なかなか決断できず、周囲に流され押され、いつも受動的で腰砕け…。
「総理、ご決断を!」と閣僚から迫られてやっと決断。心ここにあらずのようにしぼり出す「わかった」は、まさに名バイプレイヤー大杉漣さんならではの名言でした。
そんな大河内総理。次第に、日本国の総理としてリーダーシップを発揮するようになるのですが、その真骨頂と言えるのが冒頭の激情シーンでしょう。
タバ作戦の失敗を受け、露骨なまで感情を露にする大河内総理。
これまで自分に「ご決断を」とけしかけてきた閣僚らに仕返しするかのように、「考えろよ」とぶち切れます。
大杉漣さんは、言葉のみならず、表情と声色で、見事に大河内総理の熱い一面を表現しました。
3分にも及ぶこのシーンをバッサリとカットしてしまったのは、庵野監督のリーダーシップだったのか。それとも放映時間の制約だったのか。
ただ、その後の大河内総理の運命を考えると、このシーンは確かに無くて正解だったのかもしれません。
名バイプレイヤー
名バイプレイヤー、大杉漣さん。
1951年、徳島県生まれ。長い下積みを経て北野武監督の映画などで才能を認められ、人気俳優に。
バラエティなどにも出演し、コワモテながらも人好きするキャラクターで、茶の間からも愛されました。
バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら(DVD)
映画「シン・ゴジラ」では日本国の総理大臣を演じ、凶獣ゴジラから首都を守るべく奮闘しました。
そのほとばしる激情シーンはカットされましたが、それも名バイプレイヤー大杉さんらしいのかもしれません。
ありがとう、大杉漣さん。ありがとう、大河内総理。
享年66歳。安らかにお眠りください。